「8ビートと呼んではいけない」グルーブコントロールへの道2

グルーブコントロールへの道2

ユウジ「先生、今日はグルーブコントロールの方法、教えてくれるんすよね!」

先生「ああ、そうしたいのはヤマヤマだが、そう簡単に行くかどうか…」

ユウジ「わかってます。めっちゃ複雑なんすよね?」

先生「いや、複雑ではない。それはむしろものすごい単純なんだ」

ユウジ「おお!じゃあさっそくお願いします!」

先生「むしろ単純すぎて、???ってなるかも」

ユウジ「単純すぎて?」

ユウジ「でも単純なら、すぐにできそうっすね」

8ビートと呼んではいけない

先生「ユウジがバンドでよく叩いているリズムあるよね?」

ユウジ「ああ、8ビートっすね。まあ16ビートもやりますけど…」

先生「実は、まずその呼び方をやめた方がいい」

ユウジ「は? 8ビートっすか?」

先生「そう」

ユウジ「なんすか?唐突に」

ユウジ「なんで8ビートがいけないんすか?」

先生「ユウジ、もう習い始めて何年くらいたつ?」

ユウジ「もう2、3年ぐらいっすね」

ユウジ「先生、僕はこれでも、まわりからはモーラー奏法がちゃんとできる結構イケてるヤツって思われてんすよ」

先生「進化するモーラーの脚への応用は、どんな感じだい?」

ユウジ「そうっすね。スイベルはまだ未完成ですが、脚もだいぶ楽に動いてきました」

先生「おっと、いかんいかん、今日はグルーブの話だね」

ユウジ「なんで8ビートって呼んじゃいけないのかって事っすよ」

先生「もう2年も習ってるんだったら、もうそろそろその辺の事を理解しなきゃね」

ユウジ「でも呼び名ぐらい、なんだってよくないっすか?」

先生「私もはじめは、8ビートがリズムの名前になることぐらい大した問題じゃないって思っていたんだよ」

ユウジ「そうなんすか。じゃあなんでなんすか?」

ビートとリズムは同じではない

先生「端的に言うと、ビートとリズムは同じではないからなんだ」

ユウジ「ふーん、そうなんすか…」

先生「音は同じでもビートが変わるとリズムは変わってしまうんだよ」

ユウジ「う~ん、なんかよくわかんない…」

先生「ビートというのはもともと拍という意味なんだ」

ユウジ「…それは聞いた事があるっす」

先生「ビートとリズムの区別がつかないようでは、グルーブ解析は絶対にできないんだよ」

ユウジ「そうなんすか!」

先生「現状ではほとんどのドラマーが、ビートをリズムだと思ってる」

ユウジ「ビートってリズムの別名じゃないんすか?」

先生「ビートとリズムは、本当はまったく違うものなんだよ」

ユウジ「ビートとリズムって違うものなんすね」

先生「そうなんだ」

ユウジ「でも、ビートは拍でも8ビートになったらリズムって事でいいじゃないんすか?」

先生「それが、そうじゃダメなんだ」

ユウジ「それは、なんでなんすか?」

先生「8ビートをリズムの名前にしてしまうのがいけない理由は、ビートがリズムと同じものである事を暗に相手に伝えてしまうからなんだけど、それがいかに音楽的にダメな事なのかは、リズムの本質をしっかり理解してつかむ必要があると思うよ」

ユウジ「ウ~ン…」

先生「ユウジの言う通り、名前なんてどうでもよかったんだよ。ビート以外のものであれば…」

ユウジ「ビート以外のものであれば?っすか?」

先生「そう。例えば8フィール、8パルス、8ノート、などなど、どんな名前でもよかったんだ。でもビートだけはリズムの名前として使ってはいけなかったんだ」

ユウジ「ビートだけは…使ってはいけない…」

先生「そう」

自由を履き違えるユウジ

ユウジ「なんか先生らしくないっすね。いつもはもっと自由にいろいろやれって言うじゃないっすか」

先生「ウ~ン…」

ユウジ「こうしちゃいけない、ああしちゃいけないって……もっと自由でいたいのに…」

先生「…」

ユウジ「ドラムってもっと自由なもんっすよね?」

先生「ユウジ、君の言う通りだけど、でもね、自由には責任を伴わなければならないんだよ」

ユウジ「責任?8ビートっていう名前に?責任っすか?」

先生「8ビートという名前をリズムパターンを表す言葉として使うのなら、ビート=リズムになってしまうという事に対しての責任」

ユウジ「たしかにビートがリズムになっちゃうっすね」

先生「そうなんだ。ビートとリズムの区別がついていない限り、グルーブは絶対に理解できないんだ」

ユウジ「絶対になんすか?」

先生「理解するという意味ではね。もちろん理解できなくても演奏できる人はいるよ」

ユウジ「そういえば先生、こういうリズムパターンの時、いつも8フィールとかエイトとかっていってますね」

8ビートという名前は外国では通用しない

先生「そうだね。さらに言うと、8ビートという言葉をリズムパターンの名前として扱うのは日本ぐらいで、外国に行ったら通用しないって知ってるかい?」

ユウジ「ええ!そうなんすか!」

先生「和製英語ってやつだね」

ユウジ「確かに、よく考えると、ビートは拍なんだから、8ビートは……」

先生、ユウジ「8拍!」

先生「8ビートを叩いてって言うと…」

ユウジ「8拍叩いてって事になる…外国だと。って事っすね」

先生「そう」

ユウジ「そりゃあ、伝わんないな!(^^)」

先生「しかも、『8ビート』を叩いている時、ほとんど人は4拍になってるよね」

ユウジ「8ビート=4拍なんで、8拍=4拍になっちゃうっすね。

……たしかに、めちゃくちゃっすね」

先生「そうなんだ」

ユウジ「なるほど…」

拍(ビート)とは何か

先生「ユウジ、拍って何だと思う?」

ユウジ「う~ん…あの、1、2、3、4ってカウントするときの拍ですよね?拍は拍なんじゃないっすか?」

先生「拍の属性を出来るだけ捉えておくのは、グルーブやリズムの本質を捉えるのに非常に重要な事なんだよ。」

ユウジ「拍の属性…」

先生「拍は音で表せると思うかい?」

ユウジ「え?できるんじゃないですか?」

先生「そうだね。1、2、3、4、と言ったりすれば、それは拍が音になったことになるね。」

先生「じゃあ、拍は音そのものなのかい?」

ユウジ「…」

先生「…」

ユウジ「いや、ちがいますよね。拍は音そのものじゃないですね。」

先生「おお!さすがユウジ、その通りだよ。」

先生「じゃあもう一度聞くけど、拍とは何のことだい?」

ユウジ「…」

先生「…」

ユウジ「ウ~ン」

先生 (^^)

ユウジ「わかりそうで、わからない…ってか、説明できないっすよ」

先生「拍とは自分の意識でつくる音楽的な区切りの事だよ。」

ユウジ「音楽的な区切り…」

先生「リズムを感じる時、ほぼ同時に拍を感じるよね?」

ユウジ「ああ、例えばドンタンドドタンっとかだったら、4拍とかそういうことっすか?」

先生「そうそう」

ユウジ「でも、そんなのみんな当たり前にやってますよね?」

先生「当たり前にね」

ユウジ「でもみんなグルーブコントロールができているとは思ってないじゃないっすか?」

先生「そうだね。おそらくその通りだと思うし、実際できてる人は少ないと思う」

ユウジ「でも無意識にできてる人はいるんすよね?」

先生「もちろん!というかほとんどの人が無意識にやってるんだ」

ユウジ「才能の違いっすか?」

先生「ウーン、それもあるけど、どちらかというと個性の違いと言った方が近いような…」

ユウジ「無意識にやってる事をコントロールしていくって事っすね」

先生「そうそう」

ユウジ「ウーン、はやく全貌が知りたい…」

先生 「まあ、そうあわてるな。少しづつじっくりいこう」

 

次回に続く

第3話はこちら。

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