ユウジ「グルーブの定義ってあったじゃないっすか」
先生「うん」
ユウジ「あれって先生が考えたって言ってましたよね?」
先生「そうだけど?」
ユウジ「自分でも考えてみたんすけど、なんか要約されすぎてて、よくわかんないっすね」
先生「ウーン」
ユウジ「もうちょい解りやすいのないっすかね?」
先生「そうか…」
ユウジ「具体的に演奏にどう応用していけばいいのか、わかんなくって,..」
先生「そうだな。どうしても形而上的になっているからなあ…」
ユウジ「え?ケイジ…?」
先生「ああ、こっちこのとだ。気にするな」
ユウジ「???」
先生「じゃあ、違う方向から話をしよう」
ユウジ「おお!」
グルーブの2大要素
先生「実はグルーブは、2つの要素でできているんだ」
ユウジ「2つっすか?」
先生「そう」
ユウジ「そんなに単純なんすか?」
先生「そうなんだ」
ユウジ「おお!」
先生「それを、僕はグルーブの2大要素と呼んでいるんだけど…」
ユウジ「うん、うん」
先生「2つのうちの1つは、シンコペーション、もう1つは、インデペンデンスなんだ」
ユウジ「え?シンコペーションと…いんで…いんで?」
先生「インデペンデンス」
ユウジ「インデペンデンス?」
先生「そう」
ユウジ「インデペンデンスってなんすか?」
先生「端的に言うと、拍の表を強調する状態のことなんだが…」
ユウジ「はあ」
先生「意味はわかるかい?」
ユウジ「表を強調?」
先生「そう」
ユウジ 「ウーン…」
ユウジ「そんな音楽用語ありましたっけ?」
先生「いや、無いよ」
ユウジ「え?」
先生「ない(^^)」
ユウジ「そうっすよね」
先生「私がみんなにグルーブを理解してもらうために、シンコペーションと対比させる用語として、新しく加えたんだよ」
ユウジ「マジっすか!」
先生「元々の意味は独立という意味だよね」
ユウジ「そうっすね」
先生「それに、私が説明するシンコペーションは、現在の音楽用語で使われているものと少し違って、より広範囲になっているんだ」
ユウジ「広範囲っすか?」
先生「そう」
ユウジ「ウーン…一般的に使われているシンコペーションの意味と違うんすか?」
先生「完全に違うわけじゃないんだ。一般的に使われている意味ではもちろんそのまま使ってるよ」
ユウジ「そうなんすね」
先生「私が使う意味においては、通常シンコペーションとは言われないが、事実上シンコペーションと同等の現象がおきている事象についてもそう呼んでいるという事だね」
ユウジ「ウーン、いったいどんな事なんだろう?」
先生「それをしっかりと理解していくために、シンコペーションとは何かを掘り下げる必要があるだろう?」
ユウジ「まあ、そうっすね」
先生「それに?この2つをしっかり理解するためには、拍の表と裏の事を考えておく必要があるんだ」
ユウジ「そうなんすか!」
先生「そう」
先生「それで聞くけど、表と裏ってなんのこと?」
ユウジ「え?表と裏の意味っすか?」
先生「うん」
ユウジ「えーっと、例えば、8分音符が並んでいるとして、前から奇数番目が表で、偶数番目が裏……」
先生 (^^)
ユウジ「あれ?まてよ…そうじゃないな…」
先生「そうじゃないよね」
ユウジ「そうすると3連符の時がおかしくなっちゃうから…えーっと…」
先生「前から3番目は絶対に表なのかい?」
ユウジ「…いえ、違うっすね」
先生「表と裏を音を基準に考えちゃダメだぞ」
ユウジ「は?音を基準では考えない…っすか?」
先生 「そう」
ユウジ (^^)
拍は音によって決められるのか?
先生「だって拍は音によって決められるものじゃないだろう?」
ユウジ「……え?」
ユウジ「拍は音で決めますよね?」
先生「うん?拍は音によって『決められる』のかい?」
ユウジ「違うんすか?」
先生「拍は音で表される事が多いだけで、音によって拍は決められる訳ではないよ」
ユウジ「うーん….わからないなあ…」
先生「ユウジ、お前、この間は拍は音そのものではないってわかってたじゃないか」
ユウジ「……ああ、そうだった」
ユウジ「先生って、もしかして、禅問答って好きなんすか?」
先生「え?禅問答?」
ユウジ「いつもそうやって、考えさせるじゃないっすか」
先生「ああ、そうだね。自分で考える事は本当に大切な事だからね」
ユウジ「先生って、音大出てるんすか?」
先生「いや、私は経済学部出身だが…」
ユウジ「マジっすか!音大出てない自分には難しく思えるっす」
先生「私は、音大どころか音楽の専門学校すらでていないよ」
ユウジ「そうっすか…」
先生「非常に残念だが、こういう基礎の基礎にあたる部分は、音大や専門学校でも、ちゃんとは説明されていないんだ」
ユウジ「確かに…」
先生「僕も音楽の専門学校で長いこと講師を務めていた事があるから、そのへんのことはよくわかるってるよ」
ユウジ「そうなんすね」
先生「そもそも、8ビートをリズムパターンの名前として平気で使っていられる時点で、ビートがリズムになっているじゃないか」
ユウジ「ウーン」
先生「ちゃんとわかっていない証拠なんだよ」
ユウジ「ウーン….」
先生「もう一度聞くけど、表と裏ってなんのこと?」
ユウジ「……」
先生「ああ、じゃあ聞き方を変えるよ」
表と裏はある特定の位置を表しているのか?
先生「表と裏っていうのは、ある特定の位置を表しているのかい?」
ユウジ「前から2番目、3番目、てきな?」
先生「うん」
ユウジ「いえ、違うっすね」
先生「お!さすがユウジ、その通りだね」
ユウジ「音の…なんというか…拍の最初と最後…かな?」
先生「拍の最初と最後が表と裏っていうことかい?」
ユウジ 「…たぶん…(^^)」
先生 「惜しい!」
ユウジ「惜しい?」
先生「拍の意識と表と裏の意識というのは、文字通り表裏一体なんだ」
ユウジ「ウーン」
先生「表と裏というのは、拍を構成する意識の事なんだ」
ユウジ「拍を構成する意識…」
先生「どこからどこまでが拍何かを自分で決める意識といってもいい」
ユウジ「ここでも意識なんすね」
先生「前回、12個の音がビートという拍を変えると、同じ音が違うリズムに変わる事を説明したよね」
ユウジ「そうっすね」
先生「これをグルーブに適応させていくことができれば、グルーブ解析は可能になるんだよ」
ユウジ「ウーン…どうやってやるんすか?」
先生「でもその前に、表と裏とは何かをしっかり把握しておかなくてはならないんだ」
ユウジ「はあ…」
先生「例えば、この8分音符を見て…」
ユウジ「普通の8分音符っすね」
先生「これに、表と裏があるとしたらどうなる?」
ユウジ「そりゃあまあ、最初が表で次が裏なんじゃないっすか?」
先生「そうだね、これに異論はないよね?」
ユウジ「そうっすね」
先生「じゃあ、3連符だったらどうなると思う?」
ユウジ「ああ、それさっき言おうとしたんすけど…」
先生「うん」
ユウジ「最初が表で、最後が裏…」
先生「最初が表はいいんだが、裏は最後だけなのかい?」
ユウジ「ウーン….」
先生「2番目の音はどうなる?」
ユウジ「ウーン….3連の真ん中!」
先生「え?」
続く。
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